【専門家が解説】障害年金をもらえない人の特徴5つ
はじめに
うつ病や統合失調症などの精神疾患をお持ちの方の中には、「自分は障害年金を受給できないのではないか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。実際に、障害年金には一定の要件があり、すべての方が受給できるわけではありません。
しかし、一方で「受給できない」と思い込んでいるだけで、実は受給の可能性がある方も少なくありません。本記事では、社会保険労務士の専門的な視点から、障害年金をもらえない人の特徴と、よくある勘違いについて詳しく解説いたします。
障害年金とは
障害年金は、病気や怪我によって日常生活や労働に著しい制限を受ける状態になった場合に支給される公的年金制度です。国民年金から支給される「障害基礎年金」と厚生年金から支給される「障害厚生年金」があり、障害の程度に応じて1級から3級(障害基礎年金は1級・2級のみ)に区分されます。
精神疾患においても、うつ病、統合失調症、双極性障害、発達障害など様々な疾患が対象となり得ますが、単に病名があるだけでは受給できません。重要なのは、その病気によってどの程度日常生活や労働に支障をきたしているかという「障害の程度」です。
障害年金をもらえない人の特徴
症状が軽い方
最も基本的な要件として、障害年金は「日常生活に著しい支障がある方」が対象となります。症状が軽く、日常生活や社会生活に大きな制限がない場合は、当然ながら受給の対象外となります。
ただし、この判断は非常に難しく、ご自身では「症状が軽い」と思っていても、客観的に見ると相当な制限を受けている場合があります。精神疾患の場合、症状の波があることも多く、調子の良い時期だけを基準に判断してしまうケースも見受けられます。
専門家としては、症状の詳細な記録を取り、主治医との相談を通じて客観的な評価を得ることをお勧めいたします。
納付要件を満たさない方
障害年金を受給するためには、初診日の前日時点において一定期間の年金保険料を納付している必要があります。これを「納付要件」と呼びます。
具体的には、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
- 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
ただし、20歳前に初診日がある場合や知的障害の方については、この納付要件は問われません。
病院に通院をしていない方
障害年金の申請には、必ず医師の診断書が必要となります。現在通院していない場合、この診断書を取得することができないため、障害年金の受給は困難になります。
症状が重く通院が困難な場合は、往診やオンライン診療の活用を検討してください。また、過去に通院していた医療機関がある場合は、その記録を確認することも重要です。
継続的な医療との関わりは、障害年金の審査において症状の継続性や治療効果を示す重要な証拠となります。
服薬を拒否している方
障害年金は「適切な治療を受けているにもかかわらず、症状の改善が見られない」方を対象としています。医師から処方された薬物療法を、医学的な理由なく本人の意思で拒否している場合は、「適切な治療を受けていない」と判断される可能性があります。
ただし、副作用などの医学的な理由により、医師の指示の下で服薬を中断している場合は問題ありません。重要なのは、医師との連携の下で最適な治療を模索しているかどうかです。
服薬に関して不安がある場合は、自己判断で中断するのではなく、必ず主治医に相談することが大切です。
違法薬物により精神疾患になった方
違法薬物の使用が原因で精神疾患を発症した場合、原則として障害年金の対象外となります。これは覚醒剤、大麻、コカインなどの違法薬物だけでなく、シンナーなどの有機溶剤による後遺症も同様の扱いとなります。
理論上は、違法薬物の使用と精神疾患との因果関係を医学的に完全に否定できれば受給の可能性があるとされていますが、実際の審査では非常に厳しく判断されるのが現状です。
過去に薬物使用歴がある方でも、現在は適切な治療を受けているケースでは、個別の事情を詳細に検討する必要があります。
よくある質問
精神疾患でももらえる?
精神疾患も障害年金の対象となります。うつ病、統合失調症、双極性障害、発達障害、高次脳機能障害など、様々な精神疾患が認定の対象です。
重要なのは病名ではなく、その疾患によって日常生活にどの程度の支障をきたしているかです。精神疾患の場合、症状が外見からは分かりにくいため、詳細な症状の記録や医師の所見が特に重要になります。
ただし、神経症(パニック障害、適応障害、強迫性障害など)や人格障害(パーソナリティ障害、解離性障害など)は、単独では原則として対象外とされています。しかし、これらの疾患に加えてうつ病などの精神病を併発している場合は、受給の可能性があります。
年収は関係ある?
障害年金の受給要件に年収制限はありません。これは生活保護などの他の社会保障制度とは大きく異なる点です。
ただし、就労状況は障害の程度を判断する重要な要素の一つとして考慮されます。フルタイムで支障なく働けている場合は、症状が軽いと判断される可能性があります。
一方で、就労していても以下のような状況であれば、受給の可能性があります。
- 病気のために就労時間が制限されている
- 職場で特別な配慮や支援を受けている
- 仕事はできているが日常生活に著しい支障がある
- 症状の波により就労が不安定である
受給可能性があるのに諦めているケース
働いている方
「働いているから障害年金はもらえない」というのは大きな誤解です。確かに就労能力は審査の重要なポイントですが、就労イコール不支給ではありません。
以下のような状況の方は、就労していても受給の可能性があります。
- 短時間勤務や軽作業に限定されている
- 職場で継続的な支援や配慮を受けている
- 仕事中はなんとか機能するが、帰宅後や休日は著しく疲弊している
- 症状の波により欠勤が多い
- 同僚や上司の理解と協力によってなんとか勤務を継続している
重要なのは、一人で自立して働けているかどうかです。何らかの支援や配慮があってはじめて就労が可能な状態であれば、それは障害による制限があることの証明でもあります。
一人暮らしの方
「一人暮らしをしているから障害年金はもらえない」というのも誤解の一つです。一人暮らしをしていても、日常生活に著しい支障がある場合は受給の可能性があります。
例えば以下のような状況が考えられます。
- 家事や身の回りのことが満足にできない
- 食事の準備ができず、コンビニ弁当や外食に依存している
- 部屋の掃除や整理整頓ができない
- 金銭管理ができない
- 対人関係が困難で社会的に孤立している
一人暮らしの場合、家族による支援が得られないため、かえって生活に支障をきたしている可能性もあります。生活状況を詳細に記録し、客観的に評価することが重要です。
神経症・人格障害の方
前述のとおり、神経症や人格障害は単独では障害年金の対象外とされています。しかし、実際には他の精神疾患を併発しているケースが多く見受けられます。
「パニック障害」と診断されている方でも、詳しく調べると「うつ病」も併発していることが判明するケースは珍しくありません。また、「適応障害」として治療を受けていた方が、実際には「双極性障害」であったというケースもあります。
神経症や人格障害の診断を受けている方は、改めて主治医に他の精神疾患の可能性について相談してみることをお勧めします。
障害者手帳を持っていない方
障害年金と障害者手帳は全く別の制度です。障害者手帳を持っていなくても障害年金は受給できますし、逆に障害者手帳を持っていても必ずしも障害年金を受給できるわけではありません。
これらの制度は以下のような違いがあります。
- 認定機関:障害年金は日本年金機構、障害者手帳は自治体
- 認定基準:それぞれ独自の基準を持つ
- 目的:障害年金は所得保障、障害者手帳は福祉サービスの利用
障害者手帳を持っていないからといって障害年金を諦める必要はありません。それぞれの制度の要件を個別に検討することが重要です。
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当事務所では、障害年金に関する無料相談を実施しております。
「自分の症状で受給できるのか分からない」「申請の手続きが複雑で困っている」「一度不支給になったが再申請したい」など、どのようなご相談でもお気軽にお問い合わせください。
障害年金の専門家として、お一人お一人の状況に応じた最適なアドバイスを提供いたします。相談は完全無料で、秘密は厳守いたします。
さいごに
障害年金は、病気や怪我により日常生活に支障をきたしている方の生活を支える重要な制度です。しかし、その要件や手続きは複雑で、多くの方が誤解や不安を抱えているのが現状です。
本記事でご紹介した「もらえない人の特徴」に該当する場合でも、個別の事情によっては受給の可能性がある場合もあります。また、「もらえない」と思い込んでいるだけで、実際には受給要件を満たしているケースも少なくありません。
最も重要なことは、ご自身だけで判断せず、専門家に相談することです。障害年金の可能性は、詳細な状況を聞き取った上でなければ正確には判断できません。
一人で悩まず、まずは専門家にご相談ください。適切なサポートを受けることで、受給への道筋が見えてくることも多いのです。
最終更新日 2か月
投稿者プロフィール

- Ray社労士オフィス 代表 社会保険労務士
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私には身体障害者手帳と療育手帳を持つ子どもがおり、障害者手帳を受け取った際の悩みや不安、孤独感を今でも鮮明に覚えています。
複雑な日本の社会保障制度の中でも、特に専門性を必要とするのが障害年金です。
この経験と社会保険労務士としての知識や経験を活かし、「同じ悩みを抱える方々の一筋の光となりたい」という強い想いのもと、Ray社労士オフィスを立ち上げました。
障害年金申請のサポートはもちろん、皆様の言葉に耳を傾け、心配事や将来の不安を解消し、安心して暮らせる明日を築くお手伝いをいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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