【最新版】高次脳機能障害で障害年金はもらえる?

はじめに

高次脳機能障害は、交通事故や脳血管疾患などにより脳に損傷を受けることで生じる障害です。記憶力や集中力、判断力などの高次脳機能に問題が生じ、日常生活や就労に大きな影響を与えることがあります。

このような状況において、経済的支援として障害年金の受給を検討される方も多いのではないでしょうか。しかし、高次脳機能障害は外見からは分かりにくい「見えない障害」と呼ばれることもあり、障害年金の申請においても特別な配慮と専門的な知識が必要となります。

本記事では、高次脳機能障害で障害年金を受給するための要件や申請時のポイントについて、社会保険労務士の観点から詳しく解説いたします。

障害年金とは

障害年金は、病気やケガにより生活や就労に支障が生じた場合に、経済的な支援を目的として支給される公的年金制度です。国民年金から支給される「障害基礎年金」と、厚生年金から支給される「障害厚生年金」の2種類があります。

障害年金の等級と支給額

障害年金は障害の程度により1級から3級(障害基礎年金は1級・2級のみ)に区分されており、それぞれ支給額が異なります。令和7年度の支給額は前年度比1.9%増となり、以下の通りです。

障害基礎年金
  • 1級:月額86,635円(年額1,039,625円)
  • 2級:月額69,308円(年額831,700円)
障害厚生年金
  • 1級:報酬比例の年金額×1.25倍+配偶者加給年金
  • 2級:報酬比例の年金額+配偶者加給年金
  • 3級:報酬比例の年金額(最低保障額あり)

受給要件

障害年金を受給するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 初診日要件:初診日において国民年金または厚生年金に加入していること
  2. 保険料納付要件:一定期間の保険料納付実績があること
  3. 障害認定日要件:障害認定日において、障害等級に該当する障害の状態にあること

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害は、脳の損傷により記憶、注意、集中、判断、計画立案、問題解決などの認知機能に障害が生じる状態を指します。主な原因として、交通事故などによる外傷性脳損傷、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)、脳炎、脳腫瘍などが挙げられます。

高次脳機能障害の主な症状

高次脳機能障害の症状は多岐にわたり、個人差も大きいのが特徴です。主な症状には以下があります。

認知機能の障害
  • 記憶障害:新しいことを覚えられない、以前の記憶を思い出せない
  • 注意障害:集中力が続かない、複数のことを同時に処理できない
  • 遂行機能障害:計画を立てて実行することが困難
社会的行動の障害
  • 感情コントロールの困難
  • 対人関係の問題
  • 自己認識の低下
  • 社会的ルールの理解困難
日常生活への影響
  • 就労継続の困難
  • 家事や身の回りの管理の問題
  • 交通機関の利用困難
  • 金銭管理の問題

診断と評価

高次脳機能障害の診断には、神経心理学的検査、画像検査(CT、MRI等)、日常生活能力の評価などが行われます。特に神経心理学的検査では、記憶、注意、言語、視空間認知、遂行機能などの各領域について詳細な評価が実施されます。

高次脳機能障害で障害年金を申請する際の3つのポイント

高次脳機能障害の障害年金申請においては、症状の特性を理解した上で適切な準備と対応が必要です。以下、申請時の重要なポイントを3つに分けて解説いたします。

別の診断書も添付したほうが良いケースもある

高次脳機能障害の障害年金申請では、一般的に「精神の障害に関する診断書」が使用されます。しかし、高次脳機能障害の原因となった脳損傷により、他の身体的な障害も併存している場合があります。

併存する可能性のある障害
  • 肢体の麻痺(片麻痺、四肢麻痺など)
  • 失語症や構音障害などの言語機能の障害
  • 視野欠損や複視などの視覚障害
  • 聴覚障害
  • てんかん発作

このような場合、精神の障害に関する診断書に加えて、該当する身体障害の診断書も併せて提出することで、より適切な等級での認定を受けられる可能性があります。複数の障害がある場合の等級は、各障害を総合的に評価して決定されるため、すべての障害について適切に申告することが重要です。

診断書選択の判断基準
  • 主治医や専門医との相談
  • 各障害の程度と日常生活への影響度
  • 就労への影響の大きさ
  • 将来的な改善の見込み

主治医とのコミュニケーション

障害年金の認定において、医師が作成する診断書は最も重要な書類の一つです。しかし、限られた診察時間の中では、患者の日常生活の詳細な状況を医師が完全に把握することは困難です。

効果的なコミュニケーションのポイント
  1. 症状の具体的な記録
    • 日常生活で困っていることを具体的に記録
    • 症状の頻度や持続時間の記録
    • 改善や悪化の傾向の記録
  2. 生活状況の整理
    • 家族からの支援内容の整理
    • できること・できないことの明確化
    • 就労状況や社会参加の状況
  3. 診察前の準備
    • 伝えたい内容をメモにまとめる
    • 家族も同席して客観的な情報を提供
    • 前回診察からの変化を整理
医師への情報提供で重要な点
  • 感情的な表現ではなく事実に基づいた客観的な情報
  • 具体的なエピソードや数値的な情報
  • 第三者(家族、職場関係者等)からの観察内容

病歴・就労状況等申立書を正しく記入する

病歴・就労状況等申立書は、請求者本人や家族が記入する重要な書類です。この書類により、医師の診断書だけでは伝えきれない日常生活の実態や症状の変化を詳細に伝えることができます。

記入時の重要なポイント
  1. 時系列の明確化
    • 初診日から現在までの症状の変化
    • 治療経過と効果
    • 日常生活能力の変化
  2. 具体的な症状の記載
    • 記憶障害の具体例(約束を忘れる、道を間違える等)
    • 注意障害の具体例(集中できない時間、ミスの頻度等)
    • 遂行機能障害の具体例(計画立案の困難さ等)
  3. 日常生活への影響
    • 家事、買い物、金銭管理等の状況
    • 交通機関の利用状況
    • 対人関係の変化
  4. 就労への影響
    • 職場での困難な状況
    • 作業効率の低下
    • 同僚や上司とのトラブル
記入時の注意点
  • 感情的な表現や主観的な表現は避ける
  • 具体的な事実に基づいて記載する
  • 経済的な困窮を強調するのではなく、障害による生活上の支障を中心に記載
  • 家族や第三者からの客観的な情報も含める
記載例

良い例:「買い物に行っても、必要な物を忘れてしまい、メモを持参しても、メモを見ることを忘れてしまう。週に3回程度、このようなことが起こる。」

悪い例:「買い物ができなくて困っている。経済的にも大変で、どうしていいかわからない。」

無料相談実施中!

高次脳機能障害の障害年金申請は、症状の特殊性や複雑さから、一般的な障害年金申請よりも専門的な知識と経験が必要となります。

当事務所では、高次脳機能障害の方とそのご家族からの相談を多数お受けしており、以下のサポートを提供しております。

相談・サポート内容

  • 受給可能性の診断
  • 必要書類の準備方法の指導
  • 診断書作成のための医師とのコミュニケーション支援
  • 病歴・就労状況等申立書の作成支援
  • 審査請求や再審査請求の代行

相談の特徴

  • ご家族同席での面談も可能
  • 症状の特性を理解した専門的アドバイス
  • 個別の状況に応じたオーダーメイドサポート
  • 申請から受給開始まで一貫したフォロー

ご相談いただく際に準備していただきたい資料

  • 診断書や検査結果
  • お薬手帳
  • 障害者手帳(お持ちの場合)
  • 年金手帳や年金証書

高次脳機能障害は「見えない障害」と呼ばれることもあり、周囲の理解を得ることが困難な場合があります。しかし、適切な申請を行うことで障害年金の受給は十分に可能です。

一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。専門的な知識と豊富な経験を活かし、皆様の状況に最適なサポートを提供いたします。

さいごに

高次脳機能障害による障害年金の申請は、症状の複雑さや個人差の大きさから、一般的な障害よりも慎重な準備と専門的なアプローチが必要です。

重要なのは、症状を正確に把握し、それが日常生活や就労にどのような影響を与えているかを具体的かつ客観的に示すことです。そのためには、医師との密接なコミュニケーション、適切な診断書の選択、詳細な申立書の作成が不可欠となります。

また、高次脳機能障害は回復の可能性もある障害です。症状の改善が見られる場合もありますが、それが必ずしも障害年金の対象外となるわけではありません。現在の障害の状態と日常生活への影響を適切に評価し、必要な支援を受けることが重要です。

障害年金は、高次脳機能障害により生活に支障をきたしている方とそのご家族の経済的負担を軽減し、より良い生活を送るための重要な制度です。諦めることなく、適切な手続きを進めることで、必要な支援を受けることができます。

ご不明な点やご心配なことがございましたら、遠慮なく専門家にご相談ください。一人ひとりの状況に応じた最適なサポートを提供し、皆様の生活の質の向上に貢献できるよう努めております。

 

最終更新日 2か月

投稿者プロフィール

但馬 彰
但馬 彰Ray社労士オフィス 代表 社会保険労務士
私には身体障害者手帳と療育手帳を持つ子どもがおり、障害者手帳を受け取った際の悩みや不安、孤独感を今でも鮮明に覚えています。
複雑な日本の社会保障制度の中でも、特に専門性を必要とするのが障害年金です。

この経験と社会保険労務士としての知識や経験を活かし、「同じ悩みを抱える方々の一筋の光となりたい」という強い想いのもと、Ray社労士オフィスを立ち上げました。

障害年金申請のサポートはもちろん、皆様の言葉に耳を傾け、心配事や将来の不安を解消し、安心して暮らせる明日を築くお手伝いをいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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