交通事故の後遺症、障害年金をもらえるって本当?申請のポイントと注意点を専門家が解説
はじめに
交通事故による後遺症で悩んでいる方にとって、障害年金は重要な経済的支援制度です。多くの方が「交通事故でも障害年金を受給できるのか」「どのような手続きが必要なのか」といった疑問を抱えています。
実際に交通事故による後遺症で障害年金を受給されている方は少なくありません。しかし、申請には特有の手続きや注意点があり、適切な知識なしに進めると受給機会を逃してしまう可能性があります。
本記事では、社会保険労務士として障害年金申請の実務に携わってきた経験をもとに、交通事故による障害年金申請のポイントと注意点について詳しく解説いたします。
交通事故にあった場合も障害年金の対象
交通事故による後遺症は、障害年金の対象となります。事故による外傷が原因で身体機能に障害が残った場合、高次脳機能障害となった場合、精神的な障害を負った場合など、さまざまなケースで受給の可能性があります。
交通事故による障害年金の対象となる主な症状には以下があります。
身体的障害
- 四肢の欠損や機能障害
- 脊髄損傷による運動機能障害
- 視覚・聴覚障害
- 内臓機能の障害
精神・神経系障害
- 高次脳機能障害
- 外傷性てんかん
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- うつ病などの気分障害
ただし、障害年金を受給するためには、単に事故にあっただけでは不十分で、一定の要件を満たす必要があります。
障害年金とは
障害年金は、病気や事故によって日常生活や就労に支障をきたす障害を負った方に対して支給される公的年金制度です。老齢年金と同様に国民の権利として位置づけられており、適切な要件を満たせば受給することができます。
障害年金の3つポイント
障害年金の受給要件には、以下の3つの重要なポイントがあります。
① 年齢要件
原則として20歳から64歳までの方が対象となります。ただし、20歳前に初診日がある場合は20歳到達時から受給可能となる場合があります。
② 保険料納付要件
初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの公的年金加入期間の3分の2以上の期間について保険料が納付または免除されていることが必要です。また、初診日において65歳未満であれば、初診日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がないことでも要件を満たします。
③ 障害の程度
日常生活や就労に著しい支障があると認められる程度の障害があることが必要です。障害の程度は1級から3級まで(国民年金は1・2級のみ)に区分されています。
障害年金はいくら受け取れるの?
障害年金の受給額は、加入している年金制度と障害の等級によって決定されます。
障害基礎年金(国民年金)
- 1級:年額1,039,625円(月額約86,635円)
- 2級:年額831,700円(月額約69,308円)
障害厚生年金
障害基礎年金に加えて、報酬比例部分が支給されます。平均的な年収の方の場合
- 1級:月額約12~15万円
- 2級:月額約10~12万円
- 3級:月額約6~8万円(最低保障額:年額623,800円)
なお、配偶者や子がいる場合は、加算額が支給される場合があります。
交通事故にあった場合の申請のポイント
交通事故による障害年金申請には、通常の申請とは異なる特別な手続きが必要です。以下、重要なポイントを詳しく解説します。
提出書類
交通事故による障害年金申請では、通常の申請書類に加えて、第三者行為に関する特別な書類の提出が必要となります。
必要書類一覧
書類名 | 内容・注意点 |
---|---|
第三者行為事故状況届 | 年金事務所指定の様式。事故の詳細な状況を記載 |
交通事故証明書 | 自動車安全運転センターで発行。事故から相当期間経過している場合は発行されない場合もある |
確認書 | 年金事務所指定の様式。損害賠償との調整について確認 |
損害賠償算定書 | 示談が成立している場合は示談書のコピー |
同意書 | 保険会社への照会に関する同意書 |
書類作成時の注意点
交通事故証明書が取得できない場合は、以下の代替書類で対応可能です。
- 新聞記事のコピー
- 警察の事故受理番号が記載された書類
- 医師の診断書に事故状況の記載があるもの
第三者行為事故状況届の作成では、事故の発生日時、場所、状況を正確に記載することが重要です。後の損害賠償との調整に影響するため、事実関係を正確に把握して記載する必要があります。
損害賠償との併給調整
交通事故による障害年金申請で最も注意すべき点が、損害賠償金との併給調整です。
調整期間と内容
損害賠償金を受け取った場合、事故日の翌月から最長36か月間、障害年金の支給が停止されます。この調整は以下の計算式で行われます。
調整期間 = 損害賠償金額 ÷ 障害年金年額
ただし、最長36か月を超えることはありません。
調整対象となる損害賠償金
- 自賠責保険金
- 任意保険金
- 加害者からの賠償金
- 政府保障事業による給付金
調整されない場合
以下の場合は調整の対象外となります。
- 物損に対する賠償金
- 慰謝料(ただし、逸失利益相当額を除く)
- 弁護士費用
申請タイミングの検討
損害賠償金を受け取っている場合、調整期間が終了してから障害年金を申請するか、調整を受けながらでも早期に申請するかの判断が重要です。障害年金は長期にわたって受給できる制度であるため、早期の申請をお勧めする場合が多くあります。
無料相談実施中!
交通事故による障害年金申請は、通常の申請と比較して手続きが複雑になります。第三者行為に関する書類作成、損害賠償との調整、医療機関との連携など、専門的な知識と経験が必要な場面が多くあります。
専門家に相談するメリット
-
適切な申請時期の判断:損害賠償の状況を踏まえた最適な申請タイミングをアドバイスします。
-
書類作成のサポート:複雑な第三者行為関連書類の作成を適切にサポートします。
-
医師との連携:診断書作成時の医師への適切な情報提供により、申請の確実性を高めます。
-
不支給時の対応:万が一不支給となった場合の審査請求手続きもサポートします。
当事務所では、交通事故による障害年金に関する無料相談を実施しております。お気軽にお問い合わせください。
さいごに
交通事故による後遺症は、被害者とそのご家族の生活に大きな影響を与えます。障害年金は、そうした状況にある方々の生活を支える重要な制度です。
ただし、交通事故による障害年金申請には特有の複雑さがあり、適切な知識と準備なしに進めることは困難です。特に損害賠償との調整については、専門的な判断が必要な場面が多くあります。
障害年金は国民の権利です。要件を満たしている方は、必ず受給していただきたいと思います。申請に関してご不明な点がございましたら、遠慮なく専門家にご相談ください。
私たち社会保険労務士は、障害年金申請のプロフェッショナルとして、皆様の権利を守るお手伝いをさせていただきます。一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
※本記事の内容は2025年7月現在の法令等に基づいています。年金額は令和7年度の金額を記載しています。
制度の詳細や最新の情報については、年金事務所や専門家にご確認ください。
最終更新日 1週間
投稿者プロフィール

- Ray社労士オフィス 代表 社会保険労務士
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私には身体障害者手帳と療育手帳を持つ子どもがおり、障害者手帳を受け取った際の悩みや不安、孤独感を今でも鮮明に覚えています。
複雑な日本の社会保障制度の中でも、特に専門性を必要とするのが障害年金です。
この経験と社会保険労務士としての知識や経験を活かし、「同じ悩みを抱える方々の一筋の光となりたい」という強い想いのもと、Ray社労士オフィスを立ち上げました。
障害年金申請のサポートはもちろん、皆様の言葉に耳を傾け、心配事や将来の不安を解消し、安心して暮らせる明日を築くお手伝いをいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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