働ける脳出血でも障害年金は対象?|小脳出血による麻痺での相談事例(厚生年金加入中)

潜在的なリスクを抱えたまま働き続けていた男性の相談

「まさか3回目でここまでになるとは思っていませんでした。」

そう話されたのは、事務系の仕事をされていた50代の男性です。

これまで2度の脳出血を経験しましたが、いずれも後遺症はなく、仕事や日常生活にも大きな支障はありませんでした。

しかし、3度目の発症で小脳に損傷を受け、歩行が難しくなり、現在はリハビリを続けながらの生活を送っています。


ご相談の経緯

ご本人は、他の疾患(透析)による障害年金をすでに受給中でした。

今回の小脳出血によって新たに身体機能に制約が生じたため、厚生年金加入期間中の障害として別途請求ができるのかを確認したいとのことでご相談をいただきました。

面談では、過去の発症歴や加入制度、症状の経過を整理しながら、どの発症を初診日とすべきか、またどのタイミングで診断書を取得するのが適切かを丁寧に検討しました。


初診日の整理と請求方針

脳出血を複数回起こしている場合、「どの発症を初診日とするか」が非常に重要です。

今回のケースでは、出血箇所がそれぞれ異なり、主治医からも「過去の脳出血と今回の脳出血には因果関係はないものと考える」との見解がありました。

そのため、3回目の発症を初診日とした請求が最も現実的と判断しました。

ただし、審査によっては初回の脳出血が初診日とされる可能性もあるため、どちらに認定されても対応できるよう、両方の医師から証明を取得する方向で進めました。

いずれの時点も厚生年金加入中であったため、どちらが初診日と判断されてもご本人に不利益が生じることはないと考えました。


当事務所の提案

ヒアリングの結果、2つの方針を比較検討しました。

1️⃣ 初回発症を初診日とする方法

 → すぐ請求できるが、当時は障害状態に該当しない可能性が高い。

2️⃣ 3回目発症を初診日とする方法

 → 麻痺が残存しており、障害厚生年金の対象となる可能性が高い。

 → 6か月後(症状固定後)に診断書を取得して請求。

最終的に、ご本人も納得のうえで「3回目の発症を初診日とする請求」を進める方針となりました。


現在の生活とリハビリの様子

現在はリハビリ専門病院で回復に努めており、少しずつ手足の動きが改善してきています。

ただ、依然としてふらつきや平衡感覚の乱れが強く、車椅子や介助が必要な場面も多いとのことでした。

「立つのも怖いときがありますが、少しずつ前に進めるようになりました」と語られる姿が印象的でした。


社労士の見解

脳出血のように再発や多発を繰り返す病気では、「どの発症を障害の起点とするか」で結果が大きく変わります。

また、脳出血の場合には「6か月特例」と呼ばれる制度があり、発症から6か月経過して症状が固定すれば、1年6か月を待たずに請求が可能です。

今回のケースも、この特例を活用して最適な時期に診断書を取得する方針をとりました。


ご相談後の方向性

  • 症状固定時期を見極め、主治医に診断書を依頼

  • 3回目の発症を初診日とした厚生年金請求を準備

  • LINEでの連絡・資料共有を継続し、最短ルートで手続きを進行


まとめ|脳出血と障害年金請求のポイント

  • 同じ病名でも、再発や多発の経緯で初診日が変わる

  • 発症6か月後に請求できる「6か月特例」がある

  • 「働けない」ではなく「生活・移動に制約があるか」が判断基準


メッセージ

脳出血は、同じ方でも発症ごとに経過や後遺症が異なります。

「以前は回復したから今回も大丈夫」と思っていても、後遺症が残るケースでは障害年金の対象になることがあります。

早めに専門家へ相談することで、もっとも確実で無理のないタイミングでの請求が可能になります。

どうぞ一人で抱え込まず、ご相談ください。

最終更新日 3日

投稿者プロフィール

但馬 彰
但馬 彰Ray社労士オフィス 代表 社会保険労務士
私には身体障害者手帳と療育手帳を持つ子どもがおり、障害者手帳を受け取った際の悩みや不安、孤独感を今でも鮮明に覚えています。
複雑な日本の社会保障制度の中でも、特に専門性を必要とするのが障害年金です。

この経験と社会保険労務士としての知識や経験を活かし、「同じ悩みを抱える方々の一筋の光となりたい」という強い想いのもと、Ray社労士オフィスを立ち上げました。

障害年金申請のサポートはもちろん、皆様の言葉に耳を傾け、心配事や将来の不安を解消し、安心して暮らせる明日を築くお手伝いをいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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