ADHDで障害年金をもらうデメリットは何があるかを解説

「ADHDと診断されたけれど、障害年金を受給してもいいのかな…」

そう悩む方は少なくありません。障害年金は生活の支えになる一方で、「デメリットがあるのでは?」と不安に感じる声も多く聞かれます。

本記事では、ADHDで障害年金を受け取る際に知っておきたいデメリットを中心に、制度の仕組みや注意点についても詳しく解説します。

 

 

ADHDで障害年金を受給するデメリット

ADHDで障害年金を受給するデメリット

 

家族の扶養から外れることがある

ADHDで障害年金を受けていると、健康保険や年金制度上の「扶養」から外れる可能性があります。

特に年金に加えてパートやアルバイトなどの収入がある場合には注意が必要です。

具体的には、障害年金と就労収入の合計年収が180万円を超えると、健康保険上の扶養から外れる可能性が高まります。

年収が一定額を超えると、配偶者の被扶養者としての資格を失い、自分で保険料を支払わなければならなくなる場合があるんですね。

「障害年金だけなら大丈夫」と思っていても、副収入との合算によって扶養判定ラインを超えることがあります。

事前に年収見込みを確認しておけば、突然の保険料負担に慌てることなく対応できますね。

 

ただ、「障害年金だけを受給している」場合には、扶養から外れる可能性はほとんどないですね。

下に目安表を作ったので、良ければご参考にしてください。

 

「扶養判定」に関する簡単な目安表

年収合計(障害年金+給与など) 扶養判定の可能性 対応策
~130万円未満 扶養内で継続可能 特に手続き不要
130~180万円未満 保険者の判断により異なる ケースバイケースで相談が必要
180万円以上 扶養から外れる可能性大 国保または任意継続への加入が必要

※この基準はあくまで目安であり、ケースによっては異なる部分もございます

 

☞参考記事:「障害年金請求時の注意点」

 

傷病手当金や労災給付が調整される仕組みがある

傷病手当金は、健康保険から支給される給与補償ですが、同じ障害や病気で障害年金も受け取る場合には、調整が行われて減額されるか、場合によっては支給されなくなることもあります。

労災給付も同様で、併給は可能ですが、最大で約7割程度に調整されることがありますね。

以下の表は、併給時の支給率の目安です。

 

障害年金×労災給付併給時の支給率目安表

組み合わせ 労災支給率 備考
障害厚生年金(1級・2級) × 労災給付 約73% 最も調整幅が大きい
障害厚生年金(3級) × 労災給付 約88% 減額されるが調整幅はやや緩やか
障害基礎年金 × 労災給付 約88% 比較的安定した支給が見込める

 

このように、受け取れる金額が全体として減るわけではなく、制度間でうまく「分配」されていると考えると納得しやすいですね。

ただ、ADHDのケースで労災が併発することは、実務的には少数派でもあります。

また、傷病手当金の調整については、初回請求時や遡及請求時に生じやすいこともあり、↓の記事でより詳細にまとめたのでご参考にしてください。

☞参考記事:「障害年金と傷病手当金を同時にもらえる?併給ルールと申請のポイントを解説!」

 

扶養手当など家庭支援との併用は差額対応されることも

ひとり親世帯でADHDの親が障害年金を受けるケースでは、児童扶養手当との関係も注意が必要です。

たとえば、障害年金の「子の加算額」が児童扶養手当よりも低い場合には、その差額が児童扶養手当として支給されることになります。

逆に障害年金の加算額が高い場合には、児童扶養手当は支給されない可能性もあるのです。

「どちらが得なのか?」を考えるよりも、制度の特性と組み合わせを丁寧に確認することが大切ですね。

 

老後の年金額に影響はすることもある

ADHDで障害年金を受給していると、将来の老齢基礎年金の金額に影響する可能性があります。

これは、「法定免除」という制度に関連しています。

1級または2級の障害年金を受給している期間中は、国民年金保険料の納付が法律上免除されますが、その期間は老後の年金額に100%反映されないのですね。

今の生活を守るためにありがたい制度ですが、「老後にもらえる年金が減るかもしれない」という点は見逃せません。

自分の将来を見据えて、制度をうまく活用していく姿勢が求められますね。

ただ、逆にいうと国民年金を払っていないのに、「2分の1」期間払ったことになるので、メリットとも言えます。

 

 

傷病手当金の申請時に勤務先へ情報が伝わることがある

健康保険の傷病手当金を申請する際には、「障害年金を受給しているかどうか」を記載する欄があります。

この欄を通じて、勤務先の事務担当者が内容を確認することになり、間接的に障害年金の受給事実を知られる可能性があるのですね。

とくにADHDで休職中に障害年金も申請しているケースでは、このタイミングで勤務先に情報が伝わることがあります。

「言いたくないけど言わなきゃダメなの?」と迷うポイントですが、書類上のルールなので避けられない部分もあるのです。

ただ、これ以外でいえば、基本的に職場に障害年金のことが伝わることはないですね。

☞参考記事:「障害年金の対象となる傷病」

 

配偶者加給年金が停止されることもある

配偶者加給年金は、老齢厚生年金または障害厚生年金を受給している方が、生計を共にする配偶者(65歳未満)を扶養している場合に支給される年金です。

しかし、その配偶者が障害年金(特に1級・2級)を新たに受け始めると、加給年金は支給停止になる決まりがあります。

 

配偶者加給年金と障害年金の関係表

状況 配偶者加給年金の扱い 世帯全体の収入影響
配偶者が障害年金を受給していない 支給あり 加給年金+本人の年金で収入増
配偶者が障害年金(1級または2級)を受給開始 支給停止 本人の年金額増により収入はほぼ維持

 

ADHDによる障害年金の受給でもこのルールは例外ではなく、知らずに加算が止まり「なぜ?」と驚かれるケースもありますね。

☞参考:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

 

万一のときに遺族年金がもらえない可能性もある

ADHDで障害年金を受給していた場合、その方が亡くなると「死亡一時金」や「寡婦年金」が支給されない可能性があります。

これは、障害年金の仕組みに起因するもので、老齢基礎年金を受給する前に障害年金を受け取っていた人が死亡した場合に、遺族側が本来受け取れるはずの制度的保障が失われるという点ですね。

もちろんすべての遺族年金が支給されないわけではありませんが、このようなケースがあることは事前に知っておくべきです。

とはいえ、多くの場合、障害年金を長期間にわたって受給する方が金額的には有利なことが多く、必ずしも「損」とは限らない点も覚えておきましょう。

 

【実は】ADHDで障害年金をもらうことにデメリットはない

【実は】ADHDで障害年金をもらうことにデメリットはない

結論から言えば、ADHDで障害年金を受けることに本質的なデメリットはありません。

制度上の注意点や一部の調整項目はありますが、それらは「適切に理解して利用するための前提条件」であり、決して“受け取ったことが不利に働く”というものではないです。

むしろ、支援を受けることで生活の安定や治療・就労支援への足がかりができ、将来に向けた選択肢が増えることにつながりますね。

以下に、「デメリットとされがちな誤解」と「実際の制度対応」を比較した表をまとめました。

 

障害年金の不安や誤解と、実際の制度について

よくある不安・誤解 実際の制度の内容
障害年金をもらうと働けなくなる 働きながらの受給は可能。就労状況と障害の程度が基準になります
職場に受給がバレる 年金自体が知られることはほぼない。傷病手当申請時のみ注意が必要
将来の年金が大幅に減る 法定免除による影響はあるが、任意納付でカバー可能
他の制度が使えなくなる 併給調整はあるが、全体で損になる設計ではない

 

「デメリット」と呼ばれるものの多くは誤解に近い

たとえば「働けなくなる」「扶養から外れる」「職場に知られる」など、障害年金にまつわる“デメリット”とされる情報の多くは、制度の一部を切り取った誤解に過ぎないことが多いです。

実際には、働きながら受給することも可能ですし、扶養に関しても年収基準に注意すれば問題はありません。

職場に知られるリスクも、申請のタイミングを工夫することでほぼゼロにできますね。

 

 

☞参考記事:「障害者雇用をお考えの方・すでに障害者雇用枠で働いている方へ」

 

受給によって生活の再建や自己理解が深まることもある

障害年金を受け取ることで、経済的な余裕が生まれ、無理な就労やストレスの高い環境から一度離れて「自分に向き合う時間」を得られる人も多いです。

これはADHDの特性を正しく理解し、必要な支援や環境を整えるための大きなチャンスとも言えますね。

「年金をもらうこと=人生を諦めること」ではなく、「これからの人生を整える第一歩」と前向きにとらえることが大切です。

 

ADHDで障害年金をもらうなら、迷わず専門家に相談が良い

ADHDで障害年金をもらうなら、迷わず専門家に相談が良い

 

ADHDで障害年金の申請を検討している方は、専門家への相談をおすすめします。

なぜなら、障害年金の申請は単に「病名があるから申請できる」というものではなく、申請書類の内容、診断書の記載、日常生活への支障の程度、そして病歴・就労状況など、非常に多くの要素が審査に影響するからです。

特に精神障害や発達障害系の申請は、「見えにくい障害」とされ、審査基準も曖昧な部分が多いのが実情です。

正確な情報と対策を得るためには、経験のある社会保険労務士などの専門家の知見が大きな助けになりますね。

 

プロの社労士に無料相談してみる

障害年金の申請は、非常に複雑で専門的な知識が必要です。

初診日の確認、診断書の内容、納付要件のチェックなど、どれか一つでも間違えると不支給になるケースもあるんですね。

そんなときに心強い味方になるのが「社会保険労務士(社労士)」です。

特に障害年金に強い社労士は、初回相談無料のところも多く、自分の状態が受給条件に当てはまるかをプロ目線で確認してもらえます。

実際、「通院歴が長すぎて初診日があいまい」「納付状況が不安」など、一般の人が自力で調べるには限界があります。

少しでも不安を感じたら、まずは相談してみることが安心への第一歩ですね。

☞無料相談も行っています^^

 

他制度と比較しながら、将来の選択肢を増やせる

障害年金を申請するかどうかは、今の生活だけでなく、将来のキャリアや生活設計にも関わる重要な選択です。

たとえば、年金を受け取ることで就労に影響が出ないか、医療保険の加入がどうなるか、老後の年金額に影響はあるかなど、制度を横断した検討が必要ですね。

専門家に相談することで、制度を単体で見るのではなく、ライフプラン全体の中で最適な判断がしやすくなります。

 

 

【まとめ】ADHDで障害年金を受けることはデメリットではない

【まとめ】ADHDで障害年金を受けることはデメリットではない

ADHDで障害年金を受けることには、たしかにいくつかの制度的な注意点があります。

しかし、それらは「デメリット」というよりも「事前に理解しておくべき注意事項」になりますね。

扶養の問題、将来の年金額、他制度との兼ね合い、遺族年金の対象外になるケースなど、どれも正しく知っていれば必要以上に不安になることはありません。

そして何よりも大切なのは、「今の自分が安心して暮らせる支援を受けること」です。

障害年金は、その目的のために設計された制度です。

迷いや不安がある方は、ひとりで抱え込まず、専門家の意見を聞くところから始めてみましょう。

☞LINEで無料相談も行っています!

最終更新日 1週間 ago

投稿者プロフィール

但馬 彰
但馬 彰Ray社労士オフィス 代表 社会保険労務士
私には身体障害者手帳と療育手帳を持つ子どもがおり、障害者手帳を受け取った際の悩みや不安、孤独感を今でも鮮明に覚えています。
複雑な日本の社会保障制度の中でも、特に専門性を必要とするのが障害年金です。

この経験と社会保険労務士としての知識や経験を活かし、「同じ悩みを抱える方々の一筋の光となりたい」という強い想いのもと、Ray社労士オフィスを立ち上げました。

障害年金申請のサポートはもちろん、皆様の言葉に耳を傾け、心配事や将来の不安を解消し、安心して暮らせる明日を築くお手伝いをいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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