がんで障害年金を受給するのは難しいって本当なのか!?

がんと診断され、今後の生活費や治療費の不安から障害年金の申請を検討される方は多くいらっしゃいます。

一方で、インターネットや周囲の声からは「がんでの受給はハードルが高い」「仕事をしていると認められない」といった噂を聞き、申請自体を迷われてしまうケースも少なくありません。

制度の仕組みや審査で重視される視点を正しく理解していないと、本来伝えられるべきご自身の不自由さが伝わらず、手続きで遠回りをしてしまう恐れがあります。

本記事では、がんによる障害年金請求において「なぜ難易度が高いと言われるのか」の真相と、実態に即して手続きを進めるための重要なポイントを詳しく解説いたします。

 

 

がんで障害年金を受給するのは難しいと言われるが、不可能ではない

がんで障害年金を受給するのは難しいと言われるが、不可能ではない

 

がんで障害年金を受給することは不可能ではありません。

がんという病気そのものの重さだけでなく、日常生活や労働にどれほどの支障が出ているかが審査されるため、正しいアプローチを行えば十分に受給のチャンスがあります。

実際に、他で何度も断られたような深刻ながん患者の方であっても、適切な準備と手続きを行うことで受給に至った事例は数多く存在します。

したがって、難しいと言われる現状を正しく理解し、諦めずに必要な準備を整えていくことが極めて重要です。

 

 

【実例】「働いている」「見た目が元気」を理由に他で3回断られたが、最後には受給できたケース

見た目が元気で仕事をしているという理由だけであっても、障害年金の受給を諦める必要はありません。

専門家から受任を断られるような厳しい条件であっても、病状や就労制限の実態を多角的に立証できれば、十分に認定される可能性があるからです。

実際に、膵臓がんステージⅣで事務職として勤務していた福井県の50代男性は、地元の社労士3名に断られた末、当事務所での申請により障害厚生年金3級(年額約79万円)の認定を受けることができました。

抗がん剤の副作用による頻繁な下痢や倦怠感、会社からの配慮、さらに併発した糖尿病の診断書を組み合わせることで、就労中であっても障害状態が認められた実例です。

他で「働いているから無理だ」と断られてお悩みの方は、諦めずにご相談ください^^

☞事例記事:「【50代男性】地元で3人に断られた末に、膵臓がん・糖尿病で障害厚生年金3級を受給(福井県)」

 

がんで障害年金を受給するのが難しいと言われる理由

がんで障害年金を受給するのが難しいと言われる理由

 

がんで障害年金を受給することが難しいとされる背景には、制度上の認定基準や特有の症状の捉えにくさが関係しています。

一般的な障害と異なり、がんの場合は進行度や治療経過によって状態が刻一刻と変化するため、一面的な評価がしにくいという性質があるからです。

実際の現場でも、見た目や就労状況だけが一人歩きしてしまい、必要な書類準備や立証に至らず申請を諦めてしまうケースが散見されます。

まずは「なぜ難易度が高いと評価されるのか」という構造的な理由を正確に把握することが大切です。

☞参考記事:「障害年金の受給要件について」

 

がんは、「病名やステージ(進行度)」だけでは判断されないため

 

障害年金の審査においては、がんの病名やステージの高さだけで支給が決まるわけではありません。

公的年金制度における障害認定では、病状の重さそのものよりも「日常生活や就労にどれだけの制限が生じているか」という実態が最重視されるためです。

たとえステージⅣと診断されていても、抗がん剤の奏効等により支障なくフルタイム勤務ができている場合は、不支給と判断される可能性が高くなります。

したがって、診断名だけでなく具体的な生活上の不自由さを書類上で客観的に証明する必要があります。

 

自覚症状(倦怠感や抗がん剤の副作用)が数値として見えにくいため

がん患者を悩ませる強い倦怠感や抗がん剤の副作用は、審査において客観的な数値として立証しづらい項目です。

血液検査の数値や画像診断などの客観データに現れにくい倦怠感・悪心・痺れといった症状は、年金機構の認定医に伝わりにくい性質を持っています。

具体的には、本人が自宅で激しい倦怠感により横になって過ごしていても、提出書類にその実態が反映されていなければ考慮されません。

目に見えない自覚症状や副作用の辛さを「病歴・就労状況等申立書」に具体的に記載し、日頃の診察でも医師にありのまま伝えておくことが極めて重要になります。

☞参考記事:「障害年金請求時の注意点について」

 

「働いている」「見た目が元気」といった理由で主治医や専門家に難色を示されることもあるため

仕事を継続していることや外見が整っていることが理由で、申請段階で専門家や医師から断られるケースは少なくありません。

障害年金の基本概念として「労働能力の低下」が問われるため、就労中という事実だけで「受給は難しい」と簡易的に判断されがちだからです。

実際に、勤務を続けながら闘病している膵臓がんの患者が、地元の相談窓口や複数の社労士から「働いているから無理だ」と断られた実例が存在します。

しかし、後述するように勤務先での配慮や労働制限の実態を具体的に示せば受給へ繋がるため、最初の段階で諦めるべきではありません。

 

働いている場合によくある誤解と実際の判断についての概要表

誤解されやすい状況 実際の状況 ポイント
働いているから受給できない 時短勤務や頻繁な休職、職場の支援を受けながら働いている 就労の有無より労働制限や配慮の内容が重要
見た目が元気そうだから問題ない 外見は元気でも、自宅では倦怠感や副作用で休む日が多い 日常生活への支障を具体的に伝えることが大切
フルタイム勤務だから問題ない 業務内容が軽減され、残業や外回りを免除されている 仕事内容の制限も審査対象になる
会社に配慮されているから障害は軽い 配置転換やテレワーク、休憩時間の配慮を受けている 特別な配慮が必要な状況も評価される
一度「難しい」と言われた 別の専門家へ相談し、受給につながるケースもある 一人の判断で諦めないことが重要

 

☞参考記事:「働きながらでも、障害年金2級は受給できるのかをまるっと解説」

 

病状の変化が早く「どのタイミングで申請すべきか」の判断が困難なため

がんによる障害年金の手続きは、申請を行う適切な時期の見極めが非常に難しいとされています。

がんは他の慢性疾患と比較して病状の進行や治療による体調の変動が著しく、請求時期によって結果が左右されるためです。

初診日から1年6ヶ月を経過した「障害認定日」で請求を行うべきか、その後の症状悪化を待って「事後重症請求」を行うべきかは、症例ごとに異なります。

タイミングの判断を誤ると本来受け取れるはずの年金期間を逃すリスクもあるため、経過を観察しながら慎重な判断が求められます。

※実務上の重要ポイント:がんの申請で非常に多い落とし穴が『初診日の勘違い』です。がん専門病院でがんと確定診断された日ではなく、『胃が痛い』『咳が止まらない』といった初期症状で最初に近所のクリニック等を受診した日が初診日となるケースが一般的です。

ここを間違えると不支給になってしまうリスクがあるため、過去の通院歴を慎重に確認する必要があります

 

がんの障害年金が難しい状態をクリアして受給するための認定基準について

がんの障害年金が難しい状態をクリアして受給するための認定基準について

 

がん(悪性新生物)で障害年金を受給するためには、国が定める客観的な認定基準を正確にクリアする必要があります。

認定基準は大きく分けて「局所の障害」「全身の衰弱・機能障害」「治療の副作用による衰弱・機能障害」の3つに区分され、それぞれの程度に応じて等級が決定されます。

基準を正確に理解し、ご自身の状態がどの区分に該当しているかを客観的な資料によって示すことが、受給への道標となります。

以下の表は、国が示す「一般状態区分表」に基づく各等級の判定基準をまとめたものです。

☞参考資料:日本年金機構「悪性新生物による障害」

 

悪性新生物 障害 一般状態区分引用:日本年金機構

 

がんによる障害年金の等級と「一般状態区分」の目安表

等級 障害の状態(一般状態区分) 具体的な生活・労働の制限の目安
1級 区分「オ」に該当する状態 身のまわりのこともできず、常に介助が必要で、終日就床を強いられ、活動範囲がベッド周辺に限られるもの
2級 区分「エ」または「ウ」に該当する状態 歩行や身のまわりのことはできるが時に介助が必要で軽労働ができない、または日中の50%以上を就床して過ごすもの
3級 区分「ウ」または「イ」に該当する状態 著しい全身倦怠のため、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度のもの

 

審査の命運を分ける!がん専用の「一般状態区分表(ア〜オ)」の判定基準

がんの障害年金審査において、最も重要な判断指標となるのが「一般状態区分表」におけるア〜オの5段階評価です。

年金機構の認定医は、この区分が実態を正しく反映しているかを見て、1級から3級までの等級を機械的・総合的に判定します。

例えば、寝たきりに近い「オ」であれば1級、日中の半分近くを横になって過ごす「エ」や「ウ」であれば2級、労働に著しい制限がある「イ」であれば3級に該当する可能性が高くなります。

主治医が日常生活の実態を正しく把握できるよう、日頃の診察で普段の過ごし方(1日のうち横になっている時間など)をありのまま伝えておくことが大切です。

 

抗がん剤の副作用(下痢・倦怠感等)や手術後の後遺症(人工肛門など)の評価

がんそのものの局所的な病変だけでなく、抗がん剤治療による深刻な副作用や手術後の後遺症も、障害年金の正式な評価対象となります。

国が定める認定要領には、治療の効果として起こる全身衰弱や機能障害についても、総合的に判断材料に含めることが明記されているためです。

具体的には、抗がん剤の副作用による激しい下痢(1日3〜7回)や著しい倦怠感、術後の合併症である糖尿病、人工肛門(ストーマ)の造設などが評価の対象になります。

※実務上の重要ポイント:障害年金は原則として初診日から1年6ヶ月経過しないと申請できませんが、がんの手術で人工肛門(ストーマ)などを造設した場合は特例があります。『造設日から6ヶ月を経過した日』が1年6ヶ月より前であれば、その日から申請が可能となるため、スピーディーな受給につながります

見た目が元気に見えても、これらの副作用によって業務に著しい支障が出ている場合は、3級以上の障害厚生年金を受給できる可能性が十分にあります。

 

がんでは難しい障害年金申請を受給にするまでにできること

がんでは難しい障害年金申請を受給にするまでにできること

 

がんによる障害年金申請は難易度が高いとされていますが、事前にしっかり準備を立てて臨むことで、受給確率を大幅に高めることができます。

審査の仕組みや、ご自身の症状を多角的に立証する手続きのテクニックを理解すれば、適切な等級認定を受けられる可能性が高まります

ここでは、実際に審査をし、受給することができた多くの事例から導き出された、特に効果的な3つの方法を詳しく解説します。

 

方法①:診断書「血液・造血器・その他の障害用」や「代謝疾患用」等の複数使い分けする

がんの多様な症状を漏れなくアピールするためには、症状に合わせて複数の診断書を組み合わせて提出するアプローチが有効です。

がんは全身の複数の臓器や機能に影響を及ぼすため、1枚の「その他の障害用」の診断書だけでは、すべての症状を網羅しきれない場合があるからです。

例えば、がんによる全身の衰弱や倦怠感には「血液・造血器・その他の障害用(様式第120号の7)」を使用し、膵臓がん手術後の糖尿病発症に対しては「腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用(様式第120号の6-2)」を併せて提出します。

このように複数の診断書からアプローチすることで、複合的な機能障害として身体への総合的な負担を審査側に正しく評価してもらうことができます。

 

方法②: 申立書に「会社側の特別な配慮」や「就労制限の実態」を数値化して書く

仕事を続けながら申請を行う場合には、「就労中であること」が不利に働かないよう、勤務先で受けている具体的な配慮を書類に明記する必要があります。

単に「勤務中」と記載するだけでは、健康な状態と変わらずに働けていると見なされ、労働制限がないと判断されてしまうためです。

具体的には、「1日に3〜7回もの頻繁なトイレ離席が必要であること」「倦怠感により業務時間を短縮していること」「重労働から事務作業への配慮を受けていること」などを病歴・就労状況等申立書に詳しく書き込みます。

ご自身の主観的な辛さだけでなく、業務パフォーマンスの低下や会社側が施している配慮の事実を客観的・数値的に示すことが受給への強固な材料となります。

 

病歴・就労状況等申立書の記載例(会社の配慮・就労制限)

項目 記載例
業務内容 現場作業から事務職へ変更、重い荷物は免除
勤務時間 週5日・8時間→週3日・5時間へ短縮
トイレ離席 1日3〜7回、1回10〜15分の離席が必要
業務への影響 集中力が続かず、処理速度が約半分に低下
会社の配慮 残業免除、配置転換、体調不良時は休憩・早退可

 

☞参考記事:「障害年金を受給するためのポイントについて」

 

方法③:自分だけで進めるのが難しいと感じたらセカンドオピニオン(社労士)を頼る

がんの治療で体力や精神力が消耗している中で、膨大で複雑な年金手続きをすべてご自身で進めるのが難しい場合は、専門家である社会保険労務士を頼るのも方法です。

障害年金手続きは専門性が極めて高く、特にがん分野においては個別の症例に応じた定型パターンのない高度な書類作成が求められるからです。

地元の複数の専門家に相談して「難しい」と断られてしまった場合でも、がんの申請実績が豊富な他の社労士に相談することで、受給可能な切り口を見出してもらえるケースが多々あります。

医師へご本人の状況を適切に伝えるためのサポートや、書類の不備を防ぐためのアドバイスなど、社労士にサポートをお願いすることで、心身の負担を最小限に抑えながら受給を目指すことができます。

☞参考事例:「【乳がん再発・肝転移で障害厚生年金3級を受給】抗がん剤治療と仕事を両立しながら年額約62万円を受給できた実例(石川県)」

 

 

【まとめ】がんの障害年金は難しいが、適切な準備をすることで受給に繋がる可能性はある

【まとめ】がんの障害年金は難しいが、適切な準備をすることで受給に繋がる可能性はある

がんで障害年金を受給することは簡単ではありませんが、適切な準備を進めることで、受給につながる可能性があります

病名そのものだけでなく、抗がん剤の副作用や合併症による日常生活・労働の制限を、「一般状態区分表」に基づいて正確に証明することが最大のポイントとなります。

他で「働いているから」「見た目が元気だから」と申請を断られてしまった場合であっても、日常生活や就労における実際の困難さを、書類に正確に反映させることで受給に繋がった実例が数多くあります。

手続きのタイミングを見極め、ご自身の闘病の実態を客観的な書類に落とし込むことが大切になります。

最終更新日 2日 ago

投稿者プロフィール

但馬 彰
但馬 彰Ray社労士オフィス 代表 社会保険労務士
私には身体障害者手帳と療育手帳を持つ子どもがおり、障害者手帳を受け取った際の悩みや不安、孤独感を今でも鮮明に覚えています。
複雑な日本の社会保障制度の中でも、特に専門性を必要とするのが障害年金です。

この経験と社会保険労務士としての知識や経験を活かし、「同じ悩みを抱える方々の一筋の光となりたい」という強い想いのもと、Ray社労士オフィスを立ち上げました。

障害年金申請のサポートはもちろん、皆様の言葉に耳を傾け、心配事や将来の不安を解消し、安心して暮らせる明日を築くお手伝いをいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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