精神疾患のある方で障害年金2級だが、パートで働けるのか?

精神疾患のある方で障害年金2級を受給しながらパートを検討する際、最も気になるのは受給への影響ではないでしょうか。

「働くと支給が止まる」という噂を耳にして、社会復帰への一歩を躊躇してしまう方も少なくありません。

制度の仕組みを正しく理解し、適切な準備を行うことで、年金を維持しながら働く道は十分にあります。

本記事では、将来の更新で不利にならないための注意点や、体調を守りながら両立させる具体的なコツを専門的な視点から詳しく解説します。

 

 

精神疾患のある方で障害年金2級をもらいながらパートで働くことは可能

精神障害者で障害年金2級をもらいながらパートで働くことは可能

 

精神疾患のある方で障害年金2級を受給している方が、パートとして就労することは制度上認められています。

障害年金は「労働=即支給停止」という仕組みではありません。

あくまで日常生活における制限の度合いを総合的に判断する基準となっているためです。

例えば、短時間のパート勤務を行いながら、不足する生活費を年金で補い、療養と社会復帰を両立させている受給者は多く存在します。

このように、自身の病状に合わせた範囲での就労は、自立に向けた一歩として肯定的に捉えられます。

 

障害年金の受給中に労働することを、法律で禁止はされていない

日本の法律および年金制度において、受給中の就労を制限したり禁止したりする規定は存在しません。

障害年金は障害によって損なわれた労働能力や生活能力を補完するための所得保障であり、働くこと自体が権利を侵害するものではないからです。

具体的には、厚生労働省の認定基準においても「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したと判断しない」と明記されています。

したがって、主治医と相談の上で適切な範囲のパートに従事することは、制度上の問題はありません。

 

 

精神疾患のある方のうち、34.8%の人が就労している【令和元年時点】

統計データや実務上の傾向を見ても、精神障害で年金を受給しながら、実際にパート等として働いている方は増加しています。

厚生労働省のデータを見ても、精神疾患のある方で年金受給中の就労率が2009年で18.6%だったのが、2019年では34.8%にまで多くなっています。

 

障害年金受給者(20~59歳)の就労率【令和元年時点】

令和元年 障害年金受給流の就労率※参考:厚生労働省「第5回社会保障審議会年金部会より」

 

これは「合理的配慮」の考え方が社会に浸透し、短時間勤務や業務の切り出しといった、障害に配慮した働き方が普及してきたことが背景にあります。

例えば、就労継続支援事業所のみならず、一般企業のパート採用枠でも、周囲の理解を得ながら月数万円程度の収入を得るスタイルが一般化しています。

現在では、年金による経済的基盤を維持しつつ、無理のない範囲で働くことは、回復の過程における一つのモデルとなっています。

 

精神疾患のある方で障害年金2級の人がパートをする際の支給停止リスク

精神障害者で障害年金2級の人がパートをする際の支給停止リスク

 

パートを始めるにあたっては、将来の更新時に支給停止や等級降格となるリスクを正しく理解し、備えておく必要があります。

審査側が就労実態を見て「日常生活の制限が改善され、援助が不要になった」と判断する可能性があるためです。

例えば、週30時間を超えるようなフルタイムに近い勤務を安定して継続している場合、2級の認定基準である「日常生活に著しい制限がある状態」に該当しないとみなされるリスクが高まります。

受給を継続しながら働くためには、以下の表に示すような「労働の質と量」のバランスを意識することが重要です。

 

【例】障害年金2級の方がパートをする際の支給停止リスク

比較項目 支給継続の可能性が高いケース 支給停止・降格のリスクが高いケース
週の勤務時間 20時間未満(短時間) 30時間〜40時間(フルタイム)
雇用形態 障害者雇用・合理的配慮あり 一般雇用(障害を隠して就労)
業務の負担 単純作業・補助的な業務 責任の重い判断・高度な専門業務
職場での配慮 休憩の追加、指示の明確化、通院配慮 配慮なし、健常者と同じノルマ
社会保険加入 扶養内など未加入の範囲 厚生年金に加入し安定的に就労

 

周りの援助なしで働けている場合、「日常生活能力の著しい向上」と判断される可能性もある

パートでの働きぶりが「日常生活能力の著しい向上」と判定されると、次回の更新時に2級から3級へ降格、あるいは支給停止となる恐れがあります。

障害年金2級は「家庭内の生活においても援助が必要な状態」を想定しているため、制限なく自立して働けている姿はその前提と矛盾すると捉えられやすいためです。

例えば、一度も欠勤せず、職場のリーダー業務などを平然とこなしている実態があれば、審査において「援助なしで自立可能」と判断されかねません。

2級を維持しながら働くには、「仕事は頑張っているけれど、その分、家では寝込んで何もできない」といった「生活のバランスの崩れ」を審査で伝えるのがコツとなります。

働くこと自体は問題ありませんが、あくまで「周囲のサポートがあって成立している就労」であることを明確にする必要があります。

☞参考記事:障害年金を受給するときのポイントについて

 

更新時では、職場での具体的な失敗や、どんな援助をしてもらったかを詳細に記載する

更新時に提出する「診断書」の内容は、今後の受給継続を左右する最も重要な公的書類となります。

診察室での短い会話だけでは、仕事による精神的な疲弊や、帰宅後に寝込んでしまうといった「生活の裏側」が医師に伝わりきらない場合があるためです。

具体的には、診断書の「就労状況」の欄に、単なる勤務時間だけでなく、職場でどのような失敗があり、どのような助けを得ているかを詳細に記載してもらう必要があります。

表面的な「出勤実績」だけでなく、その影にある制限や困難を正確に反映させることが、適正な等級判定を受けるための鍵となります。

☞一度、無料相談も行ってますので、お気軽にご相談ください。

 

精神疾患のある方が障害年金2級を維持しつつパートで無理なく働くコツ

精神障害者が障害年金2級を維持しつつパートで無理なく働くコツ

精神障害を抱えながら、年金受給とパート就労を両立させるためには、戦略的かつ慎重なアプローチが大切です。

無理をして一時的に多く稼いだとしても、その結果として体調を崩し、年金と仕事の両方を失ってしまっては本末転倒だからです。

具体的には、まずは短時間のシフトからスモールステップで開始し、自分のメンタルが安定する「限界ライン」を正確に把握することが重要です。

自分自身の体調を第一優先にした持続可能な働き方を選択することこそが、長期的な経済的安定と社会復帰を両立させる最善の策となります。

 

精神疾患のある方が障害年金2級を受給しながらパートで働くコツ

対策の柱 具体的なアクション 期待できるメリット
専門家への相談 主治医やケースワーカーに「就労可能範囲(日数・時間)」を確認する 自身のキャパシティを超えた無理な求人応募を未然に防げる
支援機関の活用 就業・生活支援センター等を通じ、企業と「合理的配慮」の交渉を行う 職場でのミスマッチを減らし、更新時に必要な「配慮の実態」を証明できる
環境とシフトの選定 体調の波を考慮し、短時間・単純作業・休暇に理解のある職場を選ぶ 心のゆとりを保ちながら長く働き続けられ、年金と収入を安定して両立できる

 

主治医やケースワーカーへ事前に相談する

パート探しを開始する前に、必ず主治医やケースワーカーに相談し、客観的な見地から助言を求めるようにしてください。

自分では「働ける」と思っていても、医学的な視点からはまだ休息が必要な時期であったり、特定の業務内容が再発のリスクを高めたりする場合があるためです。

例えば、主治医から「週3日、1日4時間まで」といった具体的な就労可能範囲を提示してもらうことで、無理な求人に応募することを防げます。

周囲の専門家の意見を反映させた就労計画を立てることは、生活の安定を守るための最も効果的な手段です。

 

 

就労支援機関(就業・生活支援センター等)を活用する

独力で求職活動を行うのではなく、就業・生活支援センターや就労移行支援事業所などの専門機関を積極的に活用することが望ましいです。

これらの機関は、本人の障害特性を企業側に正しく伝え、必要な「合理的配慮」を交渉してくれる心強い味方となってくれるからです。

例えば、面接の同行や、入社後のジョブコーチによる定期的な面談を受けることで、職場でのミスマッチを最小限に抑えることが可能です。

専門家が介在して働くことで、将来の更新時にも「配慮を受けて働いている」という客観的な証明が得やすくなるメリットもあります。

 

体調を最優先にしたシフト管理と環境選びをする

何よりも優先すべきは、自身のメンタルヘルスを損なわないシフト管理と、ストレスの少ない職場環境の選択です。

精神障害の特性上、体調には必ず波があるため、最初から余裕のない過密なスケジュールを組んでしまうと、早晩行き詰まるリスクが高まるからです。

具体的には、急な体調不良による欠勤に理解がある職場や、マルチタスクを求められない単純な作業環境を、妥協せずに選ぶべきです。

短期的な収入の多寡に惑わされず、心にゆとりを持って長く働き続けられる環境を維持することこそが、2級の受給維持には不可欠な要素となります。

 

【まとめ】精神疾患のある方で障害年金2級でもパートとの両立は目指せる

【まとめ】精神障害者で障害年金2級でもパートとの両立は目指せる

精神障害で障害年金2級を受給しながらのパート就労は、制度上の仕組みと注意点を正しく理解していれば、十分に実現可能な選択肢です。

大切なのは、働くこと自体は禁止されていませんが、更新時の診断書には職場で受けている配慮や就労による体調への影響を正確に反映させる必要があるという点です。

また、主治医や支援機関と密に連携し、自身のキャパシティを超えない「適切な労働量」を選択することが、経済的自立と病状の安定を両立させる最善の方法です。

最終更新日 3日 ago

投稿者プロフィール

但馬 彰
但馬 彰Ray社労士オフィス 代表 社会保険労務士
私には身体障害者手帳と療育手帳を持つ子どもがおり、障害者手帳を受け取った際の悩みや不安、孤独感を今でも鮮明に覚えています。
複雑な日本の社会保障制度の中でも、特に専門性を必要とするのが障害年金です。

この経験と社会保険労務士としての知識や経験を活かし、「同じ悩みを抱える方々の一筋の光となりたい」という強い想いのもと、Ray社労士オフィスを立ち上げました。

障害年金申請のサポートはもちろん、皆様の言葉に耳を傾け、心配事や将来の不安を解消し、安心して暮らせる明日を築くお手伝いをいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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