ADHDとうつ病を併発している場合、障害年金はもらえるのか?

ADHDとうつ病を併発し、仕事や日常生活に支障が出ている場合、「障害年金を受給できるのだろうか」と疑問を持つ方もいるでしょう。

精神の障害による障害年金は、診断名だけで受給の可否が決まる制度ではありません。

ADHDとうつ病が併存しているケースでは、それぞれの症状や治療経過、日常生活能力、就労状況などを踏まえて障害の状態が判断されます。

この記事では、ADHDとうつ病を併発している場合の障害年金について、認定基準や申請時の注意点を整理して解説します。

 

 

ADHDとうつ病を併発していても、障害年金を受給できる可能性はある

ADHDとうつ病を併発していても、障害年金を受給できる可能性はある

ADHDとうつ病を併発している場合でも、一定の要件を満たせば障害年金を受給できる可能性があります。

障害年金では、単に複数の診断名があることではなく、精神疾患によって日常生活や労働にどの程度の制限が生じているのかが重要です。

ADHDによる注意力や社会的行動などの問題に加えて、うつ病による意欲低下や思考障害などがある場合には、それらを含めた障害の状態が審査されます。

そのため、「ADHDとうつ病を併発しているから受給できる」と考えるのではなく、実際の生活状況を認定基準に照らして確認する必要があります。

 

 

障害年金の対象となるのは、原因、症状や日常生活状況など総合的に認定される方

ADHDとうつ病という2つの診断を受けていることだけで、障害年金の受給が決まるわけではありません。

精神の障害は、その原因、症状、治療や病状の経過、具体的な日常生活状況などを踏まえて総合的に認定されるためです。

たとえば、ADHDとうつ病の診断を受けていても、治療によって症状が安定し、日常生活や仕事に大きな制限がない場合には、障害年金の等級に該当しないことがあります。

反対に、症状によって日常生活に著しい制限が生じている場合には、障害年金の対象となる可能性があります。

したがって、診断名の数ではなく、障害によって生じている生活上の困難を確認することが重要です。

☞参考記事:「障害年金の受給要件について」

☞参考記事:「ADHDだが障害年金をもらえない理由は何があるかを徹底解説!」

 

障害年金では病名より日常生活や労働への支障が重視される

精神の障害による障害年金では、病名だけでなく、日常生活能力や労働への制限などを含めて障害の程度が判断されます。

精神疾患は同じ診断名であっても、症状の現れ方や生活への影響が一人ひとり異なるためです。

たとえば、一人では適切な食事を用意できない、金銭管理が難しい、通院や服薬に援助が必要になるなど、生活上の支障が判断材料となります。

就労している場合も、仕事内容、職場で受けている援助、欠勤や早退の状況などを含め、実際の勤務状況を確認する必要があります。

ADHDとうつ病を併発している場合も、診断名だけで判断せず、家庭生活と就労の双方から支障の程度を整理することが大切です。

 

ADHDとうつ病を併発した場合の障害年金の等級と審査ポイント

ADHDとうつ病を併発した場合の障害年金の等級と審査ポイント

ADHDとうつ病を併発した場合も、障害年金の等級は症状や日常生活、労働への制限などをもとに判断されます。

障害基礎年金は1級と2級、障害厚生年金は1級から3級が基本となり、初診日に加入していた年金制度によって請求する障害年金が異なります。

精神の障害では、診断書の日常生活能力に関する記載だけで機械的に等級が決まるものではありません。

診断書や病歴・就労状況等申立書などから確認できる病状、治療経過、生活状況、就労状況などを含めた総合的な審査が行われます。

 

ADHDとうつ病による日常生活能力が障害等級の判断材料になる

先にもお伝えしましたが、ADHDとうつ病によって日常生活にどの程度の制限が生じているかは、障害等級を判断するうえで重要な情報です。

精神の障害では、診断書に食事、清潔保持、金銭管理、通院・服薬、対人関係、安全保持、社会性などに関する日常生活能力が記載されます。

たとえば、家族に声をかけてもらわなければ入浴や着替えができない、金銭を計画的に管理できない、服薬を忘れるため家族による管理が必要といった状況が考えられます。

ADHDによる遂行上の困難とうつ症状による意欲低下が重なることで、複数の生活場面に支障が及ぶこともあります。

申請時には、本人が努力すれば一時的にできるかではなく、日常的にどのような援助を必要としているかを具体的に整理することが重要です。

 

障害年金で確認される日常生活能力の具体的な判断材料

日常生活能力の項目 具体的な判断材料の例
適切な食事 自分で食事を用意できるか、決まった時間に適量の食事をとれるか、家族による準備や声かけが必要か
身辺の清潔保持 自発的に入浴・洗面・着替えができるか、部屋を清潔に保てるか、家族からの声かけや援助が必要か
金銭管理と買い物 収入や生活費を計画的に管理できるか、必要な買い物ができるか、衝動買いや支払い忘れがないか、家族による金銭管理が必要か
通院と服薬 一人で定期的に通院できるか、決められたとおりに服薬できるか、予約や薬の管理について家族の援助が必要か
他人との意思伝達・対人関係 相手の話を理解して自分の意思を伝えられるか、家族以外の人と適切な関係を築けるか、対人トラブルが頻繁に生じていないか
身辺の安全保持・危機対応 火の消し忘れや事故などを避けられるか、体調悪化や緊急事態に適切に対応できるか、周囲による見守りが必要か
社会性 公共交通機関を利用できるか、行政手続きなどを行えるか、社会生活に必要なルールに沿って行動できるか、外出に付き添いが必要か

 

働いていても障害年金を受給できる可能性はある

就労しているという事実だけをもって、直ちに障害年金の対象外になるとは限りません。

精神疾患の認定では、仕事をしているか否かだけではなく、仕事の種類、内容、就労状況、職場で受けている援助、周囲との意思疎通なども確認されるためです。

たとえば、一般企業に在籍していても、業務内容が限定されている、上司から頻繁な指示や確認を受けている、欠勤や早退が多いといった事情があるケースもあります。

一方、安定して就労し、職場で特別な援助を受けずに業務を継続できている場合には、その状況も障害状態を判断する資料になります。

就労中に申請する場合は、「働いている」という一点だけで判断せず、実際の勤務状況や援助の内容まで整理しましょう。

☞参考記事:「障害年金2級の人は働いてはいけないの?徹底解説します」

☞参考記事:「精神疾患のある方で、障害年金3級を働きながら受給できるのかを解説」

 

 

ADHDとうつ病を併発した人が障害年金を申請する際の注意点

ADHDとうつ病を併発した人が障害年金を申請する際の注意点

ADHDとうつ病を併発して障害年金を申請するときは、初診日、診断書、病歴・就労状況等申立書の内容を慎重に確認する必要があります。

特に精神疾患では、現在の診断名だけを見ても、いつを初診日として扱うべきか判断しにくいケースがあります。

また、医療機関での診察時間だけでは、家庭や職場で生じている困難を医師がすべて把握できるとは限りません。

受診から現在までの経過と生活上の支障を整理し、各書類の内容に不自然な食い違いが生じないよう準備することが重要です。

 

ADHDとうつ病では「初診日」の特定が重要になる

障害年金を請求する際は、初診日の確認が非常に重要です。

初診日とは、障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことをいいます。

ADHDとうつ病を併発している場合、発達障害を基礎として二次的にうつ病を発症したと判断されると、両者に相当因果関係があるものとして、初診日は「最初にADHDで受診した日」になるのが一般的です。

子どもの頃に発達の相談などで受診した記録があると、初診日が20歳前までさかのぼることがあります。その場合は障害基礎年金の1級・2級のみが対象となり、3級は請求できません。

自己判断で初診日を決めるのではなく、幼少期からの受診歴を時系列で整理したうえで、年金事務所などへ確認しましょう。

☞参考記事:「【障害年金申請】初診日がわからなくても諦めない!初診日を証明するための方法とは?」

 

 

日常生活や就労で生じている支障を、医師にお伝えしておく

診察室で確認できる症状だけでなく、実際の日常生活や就労状況を医師が正しく把握していることが重要です。

精神の障害では、診断書の内容が障害状態を審査するための重要な資料になるためです。

たとえば、「家事ができない」と伝えるだけではなく、調理ができず家族が食事を用意している、請求書の支払いを忘れるため家族が金銭を管理している、といった具体的な状況を医師に伝えます。

職場でも、ミスを防ぐためにダブルチェックを受けている、勤務時間を短縮しているなど、援助や配慮があれば整理しておくとよいでしょう。

医師に実態を正しく把握してもらうためにも、普段の生活で受けている援助や困難を日頃から具体的に伝えることが大切です

 

病歴・就労状況等申立書には症状や生活状況を具体的に記載する

病歴・就労状況等申立書では、発病から現在までの経過や就労状況などを具体的に記載する必要があります。

 

※引用:日本年金機構「病歴・就労状況等申立書を提出するとき」

 

この書類は、診断書だけでは把握しにくい受診歴や生活状況などを申立人側から説明する資料となるためです。

「うつ症状がひどかった」と抽象的に記載するだけでなく、「朝起きられず遅刻や欠勤が増えた」「家族の声かけがなければ通院できなかった」など、生活上の出来事に置き換えると状況が伝わりやすくなります。

ADHDについても、「集中できない」だけでなく、忘れ物や予定管理、対人関係などでどのような問題が生じ、どのような援助を受けたのかを整理します。

事実に基づいて、発病から現在までの状況を時系列で具体的に記載することが大切です。

 

ADHDとうつ病を併発して障害年金を申請するまでの流れ

ADHDとうつ病を併発して障害年金を申請するまでの流れ

ADHDとうつ病を併発して障害年金を請求する場合は、受給要件の確認から必要書類の提出まで順序立てて準備します。

特に初診日や保険料納付要件を確認しないまま診断書の作成を進めると、後から追加の確認が必要になる場合があります。

一般的には、初診日や加入制度を確認し、必要な証明書類と診断書、病歴・就労状況等申立書などを準備します。

申請内容によって必要書類が異なることがあるため、自分のケースに必要な書類を事前に確認しておきましょう。

 

障害年金を申請するまでの流れ

手順 やること
① 受給要件を確認 初診日・障害の状態・保険料納付要件を確認する
② 初診日を確認 受診歴を整理し、必要な証明書類を準備する
③ 診断書を準備 日常生活や就労状況を医師に伝え、診断書を作成してもらう
④ 必要書類を提出 病歴・就労状況等申立書などをそろえて請求する

 

① まずは障害年金の3つの受給要件を確認する

障害年金の請求を検討するときは、まず初診日、障害の状態、保険料納付に関する要件を確認します。

診断書で一定の障害状態が確認できたとしても、それだけで受給できるわけではないためです。

たとえば、初診日にどの年金制度へ加入していたのか、必要な保険料納付要件を満たしているのか、障害認定日などに障害等級に該当する状態なのかを確認します。

20歳前に初診日がある場合など、保険料納付要件の取り扱いが異なるケースもあります。

最初に自分がどの要件を満たす必要があるのか確認してから、具体的な書類の準備へ進むとよいでしょう。

☞参考記事:「障害年金の受給要件について」

 

② 初診日を確認して必要な証明書類を準備する

受給要件を確認したら、初診日と受診歴を整理し、必要に応じて初診日を証明する書類を準備します。

現在通院している医療機関と初診の医療機関が異なる場合には、初診時の医療機関による証明が必要となることがあります。

たとえば、最初にAクリニックを受診し、その後B病院へ転院して現在も治療を続けている場合、Aクリニックでの受診を確認するための書類が必要になることがあります。

長期間が経過してカルテが残っていない場合などは、初診日の確認方法について個別の検討が必要です。

受診した医療機関の名称や時期を可能な範囲で時系列に整理し、早めに確認を進めましょう。

☞参考記事:【障害年金申請】初診日の記録が見つからない?初診日証明のための最後の手段とは」

 

③ 医師に診断書の作成を依頼する

初診日などを確認した後は、請求方法に応じた診断書を医師へ依頼します。

障害年金では、請求の種類や障害認定日などによって、診断書で証明すべき時期が異なる場合があるためです。

精神の障害用の診断書には、傷病名や治療歴だけでなく、現在の病状、日常生活能力、就労状況などを記載する項目があります。

作成を依頼する際には、普段どのような場面で家族などの援助を受けているのか、仕事ではどのような配慮が必要なのかを医師へ具体的に伝えておくことが重要です。

診断書を受け取った後は、氏名や生年月日、日付などの記載漏れがないかを確認しましょう。

☞参考記事:「お医者様が障害年金に難色を示す理由はなぜなのかを解説!」

 

④ 病歴・就労状況等申立書などをそろえて請求する

診断書などがそろったら、病歴・就労状況等申立書をはじめ、請求に必要な書類を準備して提出します。

必要書類は請求内容や家族状況などによって異なる場合があるため、事前確認が必要です。

病歴・就労状況等申立書では、発病から初診、転院、治療、就労、現在に至るまでの経過を整理して記載します。

診断書では伝えきれない生活上の困難や、休職、退職、職場で受けた配慮なども、事実関係に沿って記載します。

書類がそろった段階で内容の整合性を確認し、年金事務所など所定の窓口へ提出しましょう。

 

 

ADHDとうつ病を併発した障害年金申請で困ったときの相談先

ADHDとうつ病を併発した障害年金申請で困ったときの相談先

ADHDとうつ病を併発している場合、初診日や傷病の関係、診断書の準備などで判断に迷ったときは、一人で判断せず相談窓口を利用できます。

障害年金には制度上の要件があり、医療上の診断と年金制度上の認定が必ずしも同じ意味になるわけではありません。

年金制度については年金事務所など、症状や治療については主治医、申請手続きについては社会保険労務士など、それぞれ相談できる相手が異なります。

自分が何について困っているのかを整理し、相談内容に適した窓口を利用するとよいでしょう。

 

年金事務所や街角の年金相談センターに相談する

障害年金の制度や必要書類について確認したい場合は、年金事務所や街角の年金相談センターなどへ相談できます。

初診日の考え方や請求手続きなど、障害年金制度に関する事項を確認できるためです。

相談するときは、これまで受診した医療機関と受診時期、加入していた年金制度などを整理しておくと説明しやすくなります。

ADHDとうつ病の双方で複数の医療機関を受診している場合には、受診歴をメモなどにまとめて持参するとよいでしょう。

請求に必要となる書類は個別の状況で異なるため、実際の請求前に確認しておくことが大切です。

 

 

主治医に症状と日常生活の状況を具体的に伝える

主治医には、診察時の症状だけでなく、家庭や職場で実際に生じている支障を具体的に伝えておきましょう。

障害年金の診断書では、日常生活能力や就労状況などについて医師が記載する項目があるためです。

たとえば、「体調が悪い」と伝えるだけでなく、週に何日程度寝込んでいるのか、食事や入浴に家族の声かけが必要なのかなどを説明します。

ADHDによる予定管理や対人関係上の困難についても、実際に生じた出来事や受けている援助を伝えると状況を共有しやすくなります。

日頃の診察から生活状況を具体的に伝えておくことが、実態に即した診断書の作成にもつながります。

 

主治医に伝えておきたい日常生活や就労状況の具体例

伝える内容 具体的な伝え方の例
体調・症状 「体調が悪い」ではなく寝込んでいる日数や、一日のうち横になっている時間
食事 「家事ができない」ではなく 調理ができているか、家族に用意してもらっているか
入浴・身支度 「身の回りのことができない」ではなく 入浴や着替えに家族の声かけが必要か
予定・服薬管理 「忘れっぽい」ではなく通院や服薬を自分で管理できているか
対人関係 「人付き合いが苦手」ではなく職場や家庭で意思疎通に支障が出ているか
仕事 「仕事がつらい」ではなく ミスの頻度や、職場で受けている確認・配慮

 

自分で申請するのが難しい場合は社会保険労務士への相談も検討する

障害年金は本人や家族が手続きを進めることもできますが、申請準備に負担を感じる場合には社会保険労務士へ相談する方法もあります。

ADHDとうつ病を併発しているケースでは、長期間の受診歴を整理したり、複数の書類を準備したりすることが負担になる場合があるためです。

特に、初診日の特定が難しい、転院回数が多い、病歴をどのように整理すればよいかわからない場合には、障害年金を取り扱う社会保険労務士へ相談する選択肢があります。

ただし、社会保険労務士へ依頼したからといって、障害年金の受給が保証されるものではありません。

自分で手続きを進める場合も専門家へ依頼する場合も、事実に基づいた資料をそろえ、障害状態を適切に伝えることが重要です。

☞無料で相談をお受けしてますので、良ければお問い合わせください^^

 

 

【まとめ】ADHDとうつ病を併発している場合でも、障害年金を受給できる可能性はある

【まとめ】ADHDとうつ病を併発している場合でも、障害年金を受給できる可能性はある

ADHDとうつ病を併発していても、受給要件を満たし、障害の状態が認定基準に該当すれば障害年金を受給できる可能性があります。

重要なのは診断名の数ではなく、症状によって日常生活や労働にどの程度の制限が生じているかです。

まずは初診日や受診歴、生活上の支障を整理し、必要に応じて年金事務所や主治医、社会保険労務士などへ相談しながら申請を検討しましょう。

最終更新日 1か月 ago

投稿者プロフィール

但馬 彰
但馬 彰Ray社労士オフィス 代表 社会保険労務士(石川県社会保険労務士会所属 社労士登録番号 17220008)
私には身体障害者手帳と療育手帳を持つ子どもがおり、障害者手帳を受け取った際の悩みや不安、孤独感を今でも鮮明に覚えています。
複雑な日本の社会保障制度の中でも、特に専門性を必要とするのが障害年金です。

この経験と社会保険労務士としての知識や経験を活かし、「同じ悩みを抱える方々の一筋の光となりたい」という強い想いのもと、Ray社労士オフィスを立ち上げました。

障害年金申請のサポートはもちろん、皆様の言葉に耳を傾け、心配事や将来の不安を解消し、安心して暮らせる明日を築くお手伝いをいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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